パレオドクター・ヒロのブログ

ダイエット:引き締まった心身を創る

『認知症の特効薬はあるのか?』

心身のダイエットパーソナルコーチのパレオドクタ—崎谷です。

 

 

 

 

今日は、以下のFBのコメントにございましたご質問に対する回答をシェアしたいと思います。

 

 

 

 

 

私は、現代医療の治療は見当がつくものの、どのような代替療法の治療が一般に流布しているのかを知らないので、このようなご質問を頂くことで社会勉強になります。

 

 

さっそくご質問の内容からいきましょう。

 

 

 



「日本だとコウノメソッドというフェルラ酸とガーデンアンゼリカを混ぜたサプリを使用することで認知症を治癒させるという方法を試す人はいますが、これは崎谷先生から見て効果があるものでしょうか?」

 

 

 

 

 

まず、このような治療法は初耳でしたので、その出どころを調べました。





2011年に熊本の精神病院が報告した臨床研究が元になっているのは間違いないと思います(Geriatr Gerontol Int 2011; 11: 309–314)。

 

 

 

 

 

認知症に伴う精神・行動障害(BPSD: Behavioral and psychological symptoms of dementia)を呈している人を対象に4週間投与した実験です。

 

 

 

 

 

認知症に伴う精神・行動障害(BPSD)とは、具体的には不穏、暴力、脱抑制(我慢が全くできない)あるいは無気力といった症状を総称するものです(この本当の原因は『ホルモンの真実3:セロトニンとスピリッチュアル』で詳述しました。TUEETのベーシック・サイエンスでも取り上げます(^_−)−☆)。

 

 

 

 

私も慢性期医療や介護の現場を長年経験してきたので、この認知症に伴う精神・行動障害(BPSD)がどのようなものかを肌身で知っています(みなさんも、夜の医療・介護現場を見ると心が痛むと思います)。

 

 

 

 

 

 

介護するものが疲弊する最大の原因ですが、今から考えればこの様な状態になるのは当然です(現代社会システムが作った“ゾンビ化”です)。

 

 

 

 

 

それはさておき、この認知症に伴う精神症状を抑えること(=管理しやすくすること)が、医療・介護現場に押し付けられています。

 

 

 

 

 

かといって、あまり強い向精神薬を使うと、本当に動けなくなってしまいます。大体は、無理にこの状態でご飯を食べさせて、嚥下性肺炎で死亡するというおきまりのパターンになります(現代医療・介護の宿命)。

 

 

 

 

 

そこでもうちょっとマイルドに認知症の精神症状を抑えて“管理しやすく”しようという試みの一つが今回の研究の趣旨です。

 

 

 

 

 

したがって、この治療法はそもそも認知症を根治治療する目的ではなく、精神・行動異常を抑えることが当初からの目的であることを抑えておきましょう。

 

 

 

 

 

この研究の評価は、4週間後に介護をしている人に変化を回答してもらったものを統計処理しています。

 

 

 

 

 

ちなみにその評価は、28項目からなる「認知症行動障害評価尺度(Japanese versioned neuropsychiatric inventory)」を使用しています。

 

 

 

 

 

その結果、不穏などの行動・精神異常が抑えられたということでした。

 

 

 

 

 

私は精神科で使用するような客観性のない評価はあまり信用していませんが、仮にこの結果が間違いないものとしましょう(介護をしている人のプラセボ効果もある)。

 

 

 

 

 

しかし、長期間フェルラ酸とガーデンアンゼリカのサプリを摂取すると、間違いなく認知症に伴う精神・行動障害(BPSD)は悪化するはずです。

 

 

 

 

 

その理由を簡潔に述べます。

 

 

まずはフェルラ酸。

これはエストロゲン作用を持つファイトケミカルです(Nutrients. 2019 Jun 21;11(6))(Eur J Clin Invest. 2006 Aug;36(8):588-96)。

 

 

 

 

エストロゲンは脳の興奮毒ですから、長期的には不穏を悪化させるばかりでなく、脳神経細胞を死滅させていきます。

 

 

 

 

 

続いてガーデンアンゼリカ(Angelica archangelica extract)。

ガーデンアンゼリカは、アセチルコリンエステレース阻害作用を持ちます(Z Naturforsch C J Biosci. 2007 Sep-Oct;62(9-10):689-93)。これによって、脳にアセチルコリンという興奮毒が増加します。

 

 

 

 

アセチルコリンエステレース阻害剤(Donepezil)は、過去にアルツハイマーの特効薬としてもてはやされました(現在、欧米ではこの薬はほとんど使われていません)。



しかし、脳の興奮毒であるアセチルコリンを増加させると逆に脳細胞が死滅します。

 

 

 

 

 

実際にこの薬剤を認知症の方に投与すると、不眠・不穏・幻覚などが起こります(PLoS One. 2015; 10(12): e0144337)。

 

 

 

 

私の臨床経験でも同様で、特に不眠と幻覚が増強しました。

 

 

 

 

 

以上から、フェルラ酸とガーデンアンゼリカのサプリが純粋な有効成分だけであったとしても、長期的には医薬品に匹敵するくらいの脳神経細胞に対する悪影響から免れることはできません。

 




最後にコウノメセッドは、医薬品で精神・行動異常を抑える方法です。

 



これらの薬剤とサプリ投与は、当初から根治治療を目的とするものではないという言い訳が成立するにしろ、長期的にはさらに悪い事態を招くのです。

 




要は”臭いもの”には蓋をして、先送りする方法(現代社会のほとんどのシステム)の一つということです。

 

 

なぜこうなってしまうのかは、人工的に作られた現代社会の枠にはめられて、その狭い枠の中でしか思考しないからですね(^_−)−☆。