心身の健康ヘルスケア・パーソナルコーチのリアル・サイエンスドクタ—崎谷です。
一般の健康ニュースの偏向報道は目も当てられない状況ですが、医師向けのニュースもほとんど状況は変わりません。
「新型コロナ重症化は抗うつ薬で抑えられる 米ワシントン大が発表」という日刊ゲンダイの記事(英語のサイトを編集しただけ(^_−)−☆)がネット上に流れています。
リアルサイエンスを学んでいると、すぐに見抜けるフェイクですが・・・・
マスコミの報道と事実は正反対であるという事例を、これを題材にしてみていきましょう。
新型コロナウイルス感染症に抗うつ薬であるSSRI(選択的セロトニン再吸収阻害剤)を投与する臨床実験を外来の患者さんに行なったという論文が発表されています(JAMA. Published online November 12, 2020. doi:10.1001/jama.2020.22760)。
細胞には小胞体というタンパク質の修復を行う小器官があります。
ここにストレスが与えられる(小胞体ストレス)と、ガンなどの慢性病を発症します。
その最大の原因は、基礎医学でお伝えしたプーファです(『糖のエネルギー代謝とタンパク質』)。
さて、今回の臨床試験で使用された抗うつ薬のフルボキサミン(fluvoxamine)は、この小胞体にある受容体に結合し、ストレスを軽減することで、炎症を防ぐとしています。
外来で、新型コロナウイルス感染症が確認されている人たちを2つのグループにランダムに振り分けています。抗うつ薬とプラセボ(偽薬)を投与するグループにそれぞれ最終的には、80人と72人。
投与15日後、この臨床試験で決めた基準で、症状が悪化したのは、抗うつ薬投与グループではゼロ。プラセボのグループでは、6名だったといいます。
たった、これだけの結果で、「抗うつ薬に効果があった!」というニュースになって主に医師向けサイトだけでなく、一般の健康サイトで流されています・・・・
さあ、この臨床試験の内容は、本当に効果が謳えるようなものなのでしょうか?
・息切れの自覚。あるいは、呼吸困難で入院したか、肺炎の診断のついた場合
・酸素飽和度<92%(室内の空気)
これを本人に電話とカルテで確認したといいます。
プラセボのグループでは、2人がこの基準を満たしましたが、何もしなくても軽快しています。3人は、一時的に酸素投与を必要とし、1名に人工呼吸器を装着したようです。
しかし、論文の副作用の詳細を見ると、抗うつ薬投与でも3名に肺炎が起こっており、この臨床試験の臨床症状の悪化の基準がよく分かりません。症状悪化の数が少ないこともあって、とても「差がある」とは言えない結果になっています。
この論文でも留意点を述べていますが、
1.小規模の限定された地域での研究であり、一般化はできない(大規模の研究が必要)
2.症状の悪化した人数が少なすぎるため、この今回採用した基準が適切ではない可能性がある
3.今回の結果は、抗うつ薬の効果ではなく、元々の酸素飽和度の差が違いを生んだ可能性がある
4.両方のグループで重症例が発生しなかったことから、抗うつ薬の新型コロナウイルス感染症の症状改善への効果は判定できない
5.当初の参加者の20%もが途中で臨床試験から脱落している。この中には、抗うつ薬投与で悪化し、他の病院に入院した例もあるかも知れない。
6.最終結果を見る期間が15日後なので、観察期間が短すぎる。長期の結果は違う可能性がある
と自らが“但書(ただしがき)”を記載しています。
全くその通りで、これらを総合すると、この臨床研究は“やり直し(inconclusive)”となるはずです。
このように実験そのものの信憑性が低いものをマスコミ(ビッグファーマも最大のスポンサー)では、プロパガンダして拡散するのです。無責任極まりないですね。
そもそも、SSRIという抗うつ薬は、短期的には、保護ホルモン様の作用を示すため、一瞬はよくなった感覚を得られるときがあります。
しかし、長期的には、セロトニンというストレスホルモンを増産して感染症を含めたあらゆる慢性病を悪化させます(セロトニンの感染症悪化については過去記事参照)。
最近では、セロトニンが統合失調症、アルツハイマー病やパーキンソン病を引き起こすとお伝えしてきたことが、ようやくエビデンスとして報告されるようになってきています。
ロックダウンでうつ病が増えたことで、抗うつ薬も売り上げが伸びているようです。
今回の偏向報道も、ビッグファーマの新型コロナ便乗による抗うつ薬の在庫セール以外、何も有益なことをもたらしません(ヒトの糞尿から薬剤が排出されて環境汚染をもたらす)。
“情報の選択”ということがよく言われていますが、私がいつも伝えしているのは、“情報”ではなく、リアルサイエンスを繋いでいくということです(^_−)−☆。
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